※STAGE 24 & 25直後の話。捏造あり
自分のイメージを崩したくないと言う方は読まない方が賢明です。



 暗い洞窟のようなところを2つの影が出口に向かっている。前者は漆黒の髪に紅紫の瞳、全身を黒いマントで纏った男。それを朱色の髪の女が追うようにして歩いている。先刻までここにいたはずであろう、親友――否、もう最大の敵と言うべきか――の姿はない。死んではいないがここにはいない。
「戦況はどうなっている」
 男――ゼロが訊ねた。決して立ち止まることはしない。行く道に退路はないと言わんばかりに、こつこつと洞窟内に響く足音が速くなる。
「私には何とも…。けれどおそらく、ゼロがいなくなって混乱していると思い…ます…」
 ゼロ。それを言葉に出した刹那、ぞくりとした。黒の騎士団を組織し、神聖ブリタニア帝国と互角とも言える戦いを指揮していたのは、良く知る人物だった。ルルーシュ・ランペルージ。――生粋のブリタニア人だ。
ふと見たゼロの横顔が、学園で見る彼のそれに重なる。やはり同一人物なのだ、と思い知らされる。
 彼は仮面が割れた所為もあるが、もはや素顔を隠そうとはしていなかった。変声器も使っていない。薄暗い周囲に髪が溶けるように混ざっている。
 カレンの返答にそうか、としかゼロは言わなかった。肯定することも否定することもせず、ただ低い声でそう呟いた。
 彼は誰よりも築いた関係が脆く崩れ去ることを知っている。たったひとつの出来事で。
「私に反発する者がこれから出てくるだろう。だからこれからは力づくで黒の騎士団を支配していくことになる。
――カレン、君はどうする?」
 ふと、ルルーシュの足が止まった。振り返り、紫色の瞳がカレンを見つめた。そして彼女は気がつく。
――――左右の瞳の色が違う、と。
「……………ギアス」
 先刻、スザクが言っていた言葉を思い出す。誰を相手にしても命令を下せる絶対遵守の力。それによって副総督に日本人の虐殺を行わせた、彼曰く――――責任を他人に擦り付ける力。
「そう、それが俺の力だ。誰に対しても1度だけ命令に従わせることが出来る。……しかし、君にギアスはかけられない」
「――え?」
 カレンは驚いた。…かけられない?
「君には1度、ギアスを使用している。もっとも、使えることが出来たところで使いはしないが」
 ルルーシュは背を向ける。そして、呟いた。
「――聞いてもいい」
 何を、と彼は言わなかった。全てということなのだろうか。あるいはカレンが訊ねることはひとつだけだと思っていたのだろうか。
――――ブリタニア人であるあなたが、どうしてブリタニアの破壊を目論むのか?
 問うと、ルルーシュはたっぷりと数泊置いて静かにこう。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア――それが俺の本名だ」
 ブリタニアというファミリーネーム。それは皇族であるということを意味する。ミドルネームは母親に由来し、血の繋がった兄妹しか同じになり得ない。AREA11前総督・クロヴィスは[ラ]、現総督・コーネリア、副総督・ユーフェミアは[リ]――つまり、彼らとは異母兄弟になる。[ヴィ]をミドルネームに持つ者…恐らくあの溺愛具合からすると、ナナリーだけなのだろう。と考えると…、推測される答えはひとつ。ある后妃の事件を照らし合わせれば尚更。
…だから。ブリタニアを、壊す。皇族に対する、あるいは皇帝に対する復讐。おそらくそれは、愛する妹のため。
「――だから…」
 声が掠れた。そのために私たち日本人を利用した?結果的に日本は解放されるけれど…?
 心が揺れた。戸惑いと絶望に似て似つかない感情で。
「好きにするといい。今、ここで黒の騎士団を抜けても構わない。……たとえ敵となっても文句は言わない」
 結果的に日本は解放されるとは言ったが、どこか後ろめたい気持ちがルルーシュにはあった。特に彼女に対しては。
 彼女たちを騙していると言うことになるのではないか、と思ったことがないわけではなかった。けれど、ブリタニアを破壊するには駒が必要だった。カレン・シュタットフェルトという人間は必要だった。
――せめて、と言うわけではないけれど。罪滅ぼしとは言わないけれど。
 黒の騎士団は大きな戦力を欠くことになるだろう。けれど。
 もしも彼女が望むなら。
 …我ながら狡いと思った。可能性は低い――否、ほぼゼロに等しいと知っていた。
 知りながら、こんなことを言うなんて。
 いくらか沈黙が落ちる。ルルーシュは振り向かなかった。ただ、カレンの返答を待っている。
「私は以前、あなたに付いて行くと言いました。その気持ちは今も、これからも変わることはありません。たとえゼロがあなたであろうと、誰であろうと。ついて行きます、あなたに。――ゼロ」
 ルルーシュにふっと僅かに笑みが零れる。
「ありがとう、カレン」
 そして彼らは歩き出した…。

END

あとがき
初ルルカレ(ゼロカレ?)小説。意識せずとも何かしらの感情があるということで。
カレンには最後までゼロについて行ってもらうことを激しく希望。

-Accompagner-:付き添う / 一緒に行く(仏語)