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―――戻ることのできない時間だけが永遠に美しい。 良く出来た言葉だと思う。1年前に、8年前に戻れたらどれだけいいか。考えなかった日はない。 限られたなかではあったが自由であったこと。 心を許すことのできる友達が出来たこと。 だが。 もう、戻ることは出来ない。 戻ることの出来ない過去は、否、戻ることが出来ないからこそ美化できる。 人は、それが辛い経験であったとしても、過去を思い出すとき、振りかえるとき、今の自分と比較する。 そしてひとりごちる。 あの時は幸せであった、と。 人は幸せを求める存在である――そう誰かは言う。 だが、それが正しいものなのかと、スザクは思うときがある。 人は幸せを求めて良いのだろうか、と。 「あの時、俺は決めたんだ…」 自分のために力を使わない。 神聖ブリタニア帝国内にある、ナイトオブラウンズに与えられた私室。 そこでスザクはひとりごちた。 自分に言い聞かせるように。そうでなければならないと。 主人である皇女――ユーフェミアの亡き後、ナンバーズとしては史上初のナイトオブラウンズとして皇帝直属の騎士に任命された。ナイト・オブ・セブン。それが今のスザクの地位だ。 トウキョー租界の激戦からもう1年が経とうとしている。 あれからスザクの周りは一変した。 拠点はエリア11からブリタニア本国に移り、ランスロットで世界の治安維持にあたる。 学校は勿論、辞めた。 私立アッシュフォード学園。 トウキョー租界にある、エリア11では名実ともに指折りの有名校。のちに彼女の騎士となるユーフェミアに勧められ、転入したのがアッシュフォード学園だった。そしてそこで彼と…ルルーシュと再会を果たした。 ルルーシュ・ランペルージ。否、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。 神聖ブリタニア帝国第11皇子、第17位皇位継承者。 そして、彼こそが――ゼロ。 黒の騎士団総司令官。ブリタニアのやり方に異議を唱え、弱者の味方と自称する。 ……信じたくはなかった。だから最後まで否定し続けた。はじめての友達だったから。ルルーシュを信じたかった。 だけど。 歯車は動き出してしまった。道を歩き始めてしまった。 もうそれを止めることは出来ない。後戻りなど出来ない。 フォトスタンドに飾られた1葉の写真。 映っているのは2人の少年と車椅子の少女。 日付は2010年7月。 ――――あの頃に。 机に突っ伏してスザクは思う。 「……友達?」 背後から声がする。気付かなかった。でもそれは…聞いた覚えのある声。 「ヴァインベルグ卿」 ジノ・ヴァインベルグ。彼と同じくナイトオブラウンズのひとり。地位としてはスザクの4つ上のナイト・オブ・スリー。ナンバーズ上がりのスザクとは違い、ブリタニアの名門貴族出身。ナイトメア・トリスタンのパイロット。 スザクは隠すようにその写真立てを寝かす。彼の方を向き、背後でそれを引き出しに仕舞う。ジノはそれに何かをいうわけでもなく、だがそこに映っていたのは誰か、と問う。 「随分幼いように見えたけど?」 もう8年も前の話。あの時は何も知らなかった。知らなさすぎた。 けれど、ある意味では…彼らと出会えたことは…幸せだった。 「もう、昔の話です」 声のトーンを落としてスザクは言う。それは寂しそうに見えて。また懐かしんでいるように見えて。 ただ過去を美化したいだけなのかもしれない。 彼と過ごした過去を。半年にも満たないあの時間を。 「捨てられない。振り切ることが出来ない」 やれやれ、そんなことを言わんばかりの表情でジノはそれを口にする。 式服というにはやや簡素過ぎるそれのポケットに両手を突っ込み、翡翠色の瞳を覗き込む。 「…………。」 「戻ることができたらいいのに…そう思う自分がいる」 否定も反論もしないスザクにジノは更に畳みかける。覗き込んだその瞳は、何かを楽しんでいるような。 「――図星だったりして?」 「…別に、俺は…」 ジノから目線を逸らし、スザクは嘯く。彼は逸らされた瞳を決して追いかけることはせず、天井を仰いで呟く。 「――閉まっておけばいい。忘れたくないならば」 残したい思い出くらい、誰にでもひとつやふたつあるさ。そんなことをつけ加えながら、横目でスザクを見る。 「自分自身を殺さない程度にね…」 その矛盾はいつか君を殺すよ? それが何を示すのか。この時はまだ誰も知らない。 END あとがき 25話でスザクはルルーシュのことを振っ切ったようですが、引きずっていることを希望。 ジノは設定がさっぱり分からないのでイメージで。時々ずばっと言う、裏がある。てのが私的イメージ。 -Memories-:思い出(英語 / 複数形) 2008.04.09/2008.04.18一部修正 |