Codegeass Suzaku of the Counterattack Novels

※コミカライズ版[反攻のスザク]最終回後の捏造です。


………
あの機械にスザクくんの時計が残っていました。
何とか直せたのでルルーシュくんに預けておきます。
いつかスザクくんが帰ってきたときに返してあげて下さい。
………
マリエル・ラビエ

あの爆発から5年の年月が経った。
1日たりとも忘れたことはない。あの日のことを。お前のことを。


宅配便に同封されていたのは、手紙。
時を刻まない時計。
 それに目を通し終えたのを見計らったように呼び鈴が鳴って、ルルーシュはゆっくりと立ち上がり扉に向かった。
 一定の長さで散髪していた髪は随分と伸びてしまっていた。美しいはずの紫の瞳が生気を失ったのはいつのことか。
「どちら様で…」
 扉を開けたその先には、
「ただいま。ルルーシュ」
 あの日消えた友の姿。


――――お が い れ ば 、そ れ だ け で 。


「ス、ザク……なのか」
 見開かれた瞳が真っ直ぐにスザクを見つめる。その瞳は、ずっと探していたもので。
「そうだよ、ルルーシュ」
 優しい声で答えられれば、ルルーシュはこみ上げるものを堪えるようにして言った。
「生きて……無事だったんだな…」
 だがそれはどこか安心しているようにも聞こえた。
「なんとか、ね」
 笑顔を見せて苦笑する。
「無茶し過ぎだこの馬鹿」
 そんな咎めの言葉とともに、胸板を叩かれる。それは彼が自分のことを心配してくれているのだということをスザクは知っていた。目頭から流れてくる滴を堪えながら、彼は、ルルーシュはそう言っているのだろう。
「ごめん」
 君も無事で良かった、と今更な言葉を付け加えてスザクはルルーシュの背中に腕を回した。気が付けば足は自然とこの場所に向かっていたけれど、もし彼がいなかったらという不安が付き纏っていた。
「お兄様……?」
 電動車椅子でやってきたのはナナリーだ。いつもと違うその様子を盲目ながらも感じている少女は、首を傾げて二人の方を向いている。
「…ナナリー……」
 嗚咽が混ざったようなそれが彼女の耳を打ち、心配な表情を浮かべた。
「どうかなされたのですか……悲しんでいらっしゃいませんか?」
 妹の憂慮に兄は勝手に流れ出た涙を拭うと、安心させるように彼女の手を握った。
「悲しくなんてないよ、ナナリー」
「でも、お兄様……」
 ナナリーの右手がルルーシュの頬に触れた。水滴の通った道筋が僅かに残っている。
「……手を、握ってやってくれないか」
 その言葉が自分に向けられたものでは無いと言うことは分かっていた。だが、兄が向けた相手が誰なのか分からない。もし、兄を悲しませたのがその人なら―――
 そんな彼女の思考は兄とは違う手が彼女のそれを触れたときに全て吹き飛んだ。
 ナナリーは何度もその手を撫でながら、
「この手…スザクさんですね」
 目頭が熱くなる。
「そうだよ」
「生きていらしたのですね……本当に、本当に……」

*

「ルルーシュ…――その瞳」
 ルルーシュの私室に入ると直ぐに、スザクは再会してからずっと気になっていたことを口にした。伸びた髪で隠している左目。以前より髪が長いのはそれを隠すためなのか。
「――――ッ」
 髪の上から間接的に触れれば、ルルーシュは痛みを堪えるような声を出した。…やはりそれは。
「ルルーシュ」
「お前の察する通りだ」
 スザクの手から逃げるようにベッドに腰かけると、ルルーシュは静かにそう告げた。
 それはあの日の――――5年前の傷。
「俺は、この力で…ギアスで人を操った。当人の意思に関係なく。それによって死にゆく人を見てきた……今でも思い出すたび見えるんだ。その断末魔が」
―――この左目に。
 ルルーシュは我知らずに右目を伏せ、光の絶えた左目に手のひらを乗せた。ルルーシュは自身の片目がそうなったことの責を、誰かに追及するつもりは毛頭なかった。それは自分の責任だと思っている。ギアスという力に手を染めた自業自得とも。
「……どうしてお前がそんな顔をする?」
 ばつが悪いように顔を伏せるスザクに、ルルーシュは問いかけた。彼は、友の左目が光を失ったことに負い目を感じているのだろうか。
 ルルーシュは俯くスザクの腕を取ると、強引に自身の隣に座らせた。
「俺はお前が戻って来てくれればそれでいい」
新緑色の瞳の友を見た紅紫の瞳は、かつてとは明らかに違っていた。
「おかえり―――スザク」

END



あとがき
反攻のスザク最終回より妄想。
ルルーシュへの愛が溢れんばかりの終盤にしか見えなかったので(フィルター在り/笑)