数え切れないほどの汚名と憎しみを背負い、歴史の表舞台を去った人物がいる。 それを尋ねられれば、多くの人間はきっとこう答えるだろう。 「神聖ブリタニア帝国第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」と。 だが彼が3つの顔を持ち使い分けていたことを知る者は少ない。それは本当に指折るだけの数。 黒の騎士団総司令官、超合集国初代CEO・ゼロ。 私立アッシュフォード学園高等部生徒会副会長、ルルーシュ・ランペルージ。 それらのことを深く知っている人間は、また限られてくる。 * 真実と言うものは後から知ることの方が圧倒的に多い。少なくともカレンに言わせれば、それは正論だった。 母親のこと、リフレインのこと、ゼロのこと。それはまさに後から知った例で、当時のカレンに重く圧し掛かった。どうして早く気付かなかったのだろうと後悔させた。その真実が重要であればあるほど、彼女のようになる確率は高い。 そして、あの時もそうだった。 「そんなあなたが今度はスザクと組んで何をしようっていうの?力が欲しいだけ?地位がお望み? ―――あなたは私のことどう思っているの」 彼は、ルルーシュは何も言わなかった。まるで沈黙は金、雄弁は銀と言っているようだった。たださよならとだけ言って、別れを告げた。それが最後だった。 だからカレンも最後の最後まで気付かなかったのだ。 ゼロレクイエムと言う言葉をカレンが知ったのは、随分経ってからのことだった。 鎮魂歌の無い世界?それともゼロであったあなたの死? 考えればいくつもの解釈が出来るそれに、ルルーシュらしい言葉だとカレンは思った。 その言葉を含め、ルルーシュ=ゼロのことは扇を含めた元黒の騎士団のメンバーの前で口にしないことにしている。彼らと出会ったきっかけこそそれだが、それは触れていい部分では無かった。「あれはゼロです!」と言ったが、藤堂あたりにはひょっとすると感づかれる可能性もあった。それだけはカレンも避けたかったのだ。 ――――それが彼の願いのような気がしたから。 「カレン、君は生きろ」 今頃気付いたのか、君は特別優秀な駒だったなどと言いながら、誰かに語るようでも無く漏れた心境のように聞こえた言葉。 遠ざけるような言葉を並べて、仮面を被った。 それはあなたの経験?それとも生き方? あなたを理解したかったの、と言えばあなたはまた笑うかしら。 一度と無く死ぬはずだった自分を助けてくれたのは、彼。 それが彼の、ルルーシュの望んでいた明日に繋がるのなら、私はもう一度 あなたの言葉通り生きてみよう。ルルーシュの分まで、なんて偉そうなことは言えないかもしれないけれど、 その思いを胸に仕舞いこんで。 泣きはしない。あなたの死を嘆いたり、悲しんだりはしない。 だから。何度もなんて言わない。一度だけでいい。 「ルルーシュ、あなたに会わせて」 |