■M o n a r q u e - ブ リ タ ニ ア の 王 -

弟たちを率いてクーデタをおこした彼は、オデュッセウスの代わって王となった。その名はシュナイゼル・エル・ブリタニア。第98代国王シャルルを父に持つ、正当な後継者である。
王位に就くなり彼は、持ち前の手腕を思うがままに発揮した。各国との休戦条約や貿易協定、錯綜していた内政の改革などは瞬く間に効果を上げた。また、優秀な騎士を円卓会議に参加させると言う制度こそ存在していたものの、それを明確化したのもシュナイゼルによるものである。

「――――姫が欲しい。」
その言葉を聞いた緑の髪の少女――C.C.は思わず手を止めた。部屋の大きさに酷く不釣り合いな、4人ほどが食事を囲むのが精一杯の机に並んでいるのは大量のピザ。端から端まで並べられているそれをC.C.は遠慮なしに食べ進めていた。シュナイゼルにはティーカップが用意されているだけだ。
「以前お前は言っていた。何処かの女を娶るつもりはないと。…心変わりでもしたか?」
周りから見れば、大それた方針転換であるのに、C.C.は興味ひとつ示さない様子で飲み物の注がれたコップを手に取った。半分くらいを一気飲みしてからやっと彼に視線を向ける。
「娶るんじゃないんだ。妹のような姫が欲しいんだよ、C.C.。」
だから籍は入れない、とでもいうのか。彼らしい、と思うと同時に我儘なやつだと思った。ピザとあの手腕さえなければとっくに契約解除しているところだ、とC.C.は思う。…最も、それがあるからこそ自分はここに留まり、こうして相談役として屋敷を出入りしている訳なのだが。
「…少し前に派兵した女…。確か名をコーネリアと言ったか。血が繋がっているだろう?」
「コーネリアは妹というより弟のような存在だよ。武人のような性格だしね。」
「……それで私に要求することは何だ?お前の思うような妹を連れて来いと?」
最後の一切れを食べ終わると、C.C.はシュナイゼルの真ん前に置かれていたピザ皿を手元に寄せる。
「まさか。そこまで君に要求するつもりはないよ。君の力を少し借りたいんだ」
―――は?
そんな顔をC.C.が見せたとき。頃合いを見計らっていたかのように一人の男が入室してきた。名をクロヴィス・ラ・ブリタニア。彼の母違いの弟である。
緑色の髪、同色の瞳。ブリタニア国内――否、ブリタニア周辺でさえも稀に見ないその要旨にクロヴィスはさして驚きなどしなかった。C.C.という名こそ初め戸惑いはしたが、シュナイゼルが特に言及しなかったのでそれに従うことにした。時には王を助ける彼女を一瞥すると、クロヴィスはシュナイゼルに耳打ちした。
それを聞くと、シュナイゼルに微笑が浮かぶ。まるで全てが自分の手の上で踊っているように。
「…条件は揃った。さて本題に入ろうか」
流石のC.C.もピザを食べるのをやめた。

*

「失礼する」
相手に有無を言わさずC.C.はその扉を開けた。普段の彼女からすれば、失礼という言葉が出てきただけでも褒めるべき事態なのかもしれない。
そこでは王と貴族によって会議が催されていた。といっても、大抵の王や貴族が見せる横柄さや傲慢さというのは微塵も感じられない。さぞや狭苦しいであろう、その部屋が将に彼らの今の状況を説明していると言ってもよい。
「何者だ」
最も扉の近くに席を置く男が立ち上がる。腰には立派な剣(つるぎ)が見て取れる。男がそれを抜いても、C.C.を除く全ての人間の視線が注がれようと、C.C.は表情一つ変えなかった。
「名前を聞いている!!」
それで脅すつもりだったのだろうか、男は剣をC.C.の鼻先数センチというところまで近づけた。世の人間なら、女性なら尚更、それには動揺するだろう。身じろぎするだろう。だが、相手がC.C.という時点でそれは効力をなさない。逆に、相手を挑発する。
「脅しのつもりか?私がこれしきのことで立ち去るとでも?」
相手の感情を逆なでするような言葉に、余計にそれを助長するような挑戦的な表情は相手の頭に血を昇らせた。貴様…とお馴染の台詞とともに振りかざされるであろう剣は彼女を切り裂く前にぴたりと止まる。…恐らく彼らを束ねるものであろうと思われる人間の言葉で。
「私たちには時間がないから唐突に訊ねよう。君は何をしに来たのかね?…場合によっては処理しなければならないが」
穏やかな声とは裏腹に、侵入者に対する処罰をあっさりと述べたことは、流石王と言うべきだろう。それにC.C.は笑って見せる。
「私の名はC.C.。お前たちを助けに来たと言ったらどうする?」

部屋にいる人間の視線はひとりの少女に注がれている。誰もが訝しげに、怪しげに、C.C.を見ている。
「私たちを助けに…?私達がいまどのような状況か分かっているのか」
主は訊ねる。
「隣国の王による侵入をどのように喰い止めるか。それが議題だろう?相手が多勢で今のお前たちでは叶わないと言うことも知っている」
お前たちでは叶わないという侮辱にも値する言葉に王や貴族は反抗しようとはしなかった。れっきとした事実だからだ。実際、大幅な戦力不足で会議は殆ど進んでいない。考えられたシナリオの先は暗い。
「では何故?」
王は再び問う。ならばそのような状況を知りながら、我々に味方しようというのだろうか。
それにC.C.は笑う。それを先に訊ねられるとは思わなかった、と。
「決まっている。勝算があるからだ」
「……相手が多勢で強豪だと分かっていても?」
「当然」
テーブルを囲む者たちの疑問であろうその問いに、C.C.はさらりと答える。敵軍以上の数と力を持っているかのように。
「――しかし、協力するからには条件がある」
C.C.は切り出した。相手側もそれは予測していた。”条件”…。
「領土か?主権か?それとも私の首か…」
それらのどれであったとしても、全てであったとしても、彼らに明るい未来はない。ならば、せめて最期まで戦おうと決意するだろう。彼女は処理されるだろう。
「我々はそんなものが欲しいわけではない。――時が来るまで我々の身分を秘密にさせて欲しい。それだけだ」
それに、貴族たちは笑った。身分が分からぬ人間をどうやって信じろと?
だが王は笑わなかった。
「――――よかろう。だが、必ず明かすと約束して頂きたい。こちらも都合がありますゆえ」
王の言葉に、見知らぬものを信じるのかという内容の抗議の声が上がる。しかし、他に私たちには選択肢がないという主の言葉には皆が口を噤んだ。王から再び自分に向けられた視線に答えるかのようにC.C.は言った。
「勿論だ」

数日後、その王のもとに多くの騎士が最後まで戦う抜くという誓いを立てた。皆既に武装しているため顔を窺うことは出来なかったが、王は彼らを信じることにした。彼らにもう選択肢は残されていない。隣国の王が休戦条約を無視して侵攻してくるのも時間の問題だ。
…だから仮名のような名前の少女の”勝算”を信じるしかなかった。どちらにしろ彼らに勝算はないのだから。



Date:2008.8.15
亀ペース過ぎてすみませっ…
兄上登場。次回からルルーシュ登場です。はぁ…主人公orz


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