FULLMETAL ALCHEMIST Roy x Riza Novels-12.




 ロイは一人で椅子に座った。
 中央司令部の食堂で、だ。
 今までならば、部下とどうでもいい話をしたりすることもあったのだが、その部下たちは散り散りになった。

 ファルマン准尉は北に。
 フュリー曹長は南に。
 ブレダ少尉は西に。
 ハボック少尉は、戦闘中の負傷により退役。

 最も近くに居る筈の彼女は、一番遠いところに配属された。

 あぁこんなに広かったのか、と誰もいない執務室で思った。
 それぞれの地で、決して良い思いはしていないと思う。
 マスタング組は嫌われていた。
 その理由は知っていたし、それを知った上で付いてきてくれていた部下だった。
 自分の手で守れるだけのものを守ると親友に言っておきながら、そんな最低限のことも出来ていない自分に不甲斐なさを感じない訳は無い。後ろめたさもないと言えば嘘だ。
 だが、チェックメイトはまだ早い。
 ポーン、ナイト、ビショップ、クイーンを相手に取られたら、チェスは普通、戦えない。
 チェックを掛けられるか、ステイルメイトにされるのが落ちだ。勝てはしない。
 だが、相手が自分の駒を見逃していたとしたら。
 知っていても、しがないポーンだと侮っていたら。
 それはルールを知らないも同然だ。
 ポーンはプロポーションで、クイーンになれる。
 極秘回線で連絡はしたから、近々会うことになる。彼の知っている状況と、その先どうするか――そんなことを考えていると、頭上から声が掛かって、ロイは顔を上げた。
「ここに座ってもよろしいですか?」
 びっくりした。同じ中央でも、彼女の居る部署は大総統府だからだ。
「…あ、あぁ」
「そんなに意外ですか?敷地内でしょう?」
 確かにそうだが、諸々が違い過ぎる。
「久しぶりだと思ってな」
 その場しのぎにそんなことを言ってみたが、異動になったのは数日前の話だ。言葉違いである。
「そうですね」
 3日ぶりくらいですよ、と言うかと思ったが、リザもロイに同意した。
 それだけ、その日数は長かったと言うべきなのかもしれない。
 ロイ自身も考えることがたくさんあった。
「…―― 辛くは無いか?」
 気が付けば、訊いてしまっていた。
リザは物分かりがいい。ロイがどういった意味でそう訊ねたか分かってしまっただろう。
 事実上、人質と言う立場。仕事上のことより、それを彼は気にしている筈だと。
「今まで嫌と言うほど経験していますから、それと比べるほどではありません。…それに、大佐と違って仕事が早いですから楽なものですよ」
 自分への答えと、当たり障りのないフォローをしてくれる彼女に感謝した。
「それは、見習わないといけないな」
 どこで誰が訊いているか分からないから、ロイは素直に言葉を受け取った。
 リザに気を遣わせてしまったことを詫びたかったが、壁どころか食事を取っている机にさえ耳があると考えた方がいい。
 それほどの状況だと言うことは理解出来ている。
「Until death do us partという言葉をご存知ですか?」
「―――…死を分かつまで、か?」
 唐突な問いだったから、答えるまで少し時間が掛かった。
「意思確認の言葉だそうです」
 リザはスープを掬って口に運ぶ。
 その意味は明白だった。
「ほう?」
 感心の裏に、理解したと言う言葉を隠す。
「街で流行っていると噂ですので、ご忠告までに」
 ロイの女性好きは周知の事実だから、不自然ではない。
「気を付けるとしよう」
 そう締めくくって、ロイは立ち上がる。成すべきことはたくさんあるのだ。
 別れの言葉を掛けて、席を立つ。
 離れていても、目指す先は同じなのだ。


END

*POSTSCRIPT*
書いた後、実際に原作であっただけに影響を少なからず受けてます。監視の目とか。
中尉の口数が減っているのはそのためですが、Until〜はどうしても言わせたかった件。笑
チェス初心者なので、ルール違ってたらすみません。
2006.09 / 2010.06