FULLMETAL ALCHEMIST Roy x Riza Novels-14.



 扉をノックする音がして、リザがそちらを向くと、入るぞ?と訊き覚えのある声がした。
 全ての準備が整い、あとは時間を待つだけということで、係員には席を外して貰っていた。
 ひとりになって、心を落ち着けたい。そんな気持ちがあったからだ。
「どうぞ」
 すると、やはりリザの想像した通りの人が、控室に入ってきた。

 季節は初夏。
 天気は晴れ。
 風は穏やか。

 記念日にはこれ以上にない相応しい日だ。
 リザが纏っているのは軍服では無い。
 ロイが身に着けているのも軍服では無い。
 純白のドレスと黒のタキシードだ。

「大佐」
 リザが言えば、ロイは微苦笑した。
「今日まで階級で呼ぶことはないだろう?」
 長い間、階級で呼び合うことが多かったのだが、式直前にそう呼ばれると少しへこむ。
 今日から同じ道を歩くと言うのに。
「すみません、つい…」
 恥ずかしそうにリザは顔を逸らしてしまう。そんなところも愛おしいことに変わりは無いのだが、今日は少しばかり困る。
 話が出来なければ、彼女の部屋に来た意味がない。
「ああ、まぁ…分かればいい」
 頬を掻いて決まりが悪そうに言えば、リザは赤らめた顔でちらりとロイを見た。
 それを見てロイはひとつの推測を立てる。
もしかして、君も。
「―――緊張しているのか…?」
 その問いにリザは小さく頷いた。
 左目が見えていたら、もっと早く気づけただろうかと思う。
 自業自得でこれは報いなのだと思ってきたが、今は少し悔しかった。
 傍にある椅子に腰掛け、ロイはそんなことを思う。
「貴方は?」
 まだ恥ずかしいのか、リザは視線を合わせてはくれなかった。
 感情は己への悔やみから、彼女への共感へと変わる。
「私も同じだ」
 時間を持て余して君のところへ来たのだとロイが言えば、彼女は意外な顔を向けた。
「…貴方は緊張しないものだと思っていました」
「それは私も同じなんだが?」
 互いが緊張を隠せない状態だったことが分かって、小さく噴き出してしまう。
「知らないこともたくさんありますね」
「そうだな。…だが」
 ロイが一度そこで言葉を切ると、小さく笑った。
「君はこれから知ってくれるのだろう?」
 同じ道を歩むとはそういうことだ。

 いかなるときも、
 愛し、支え、励まし合って
 生きて行く。

「―――はい」
 リザは先よりもずっと深く頷いた。
 そこに、迷いは無い。
 ロイは頷くと、近くのテーブルにあるバラの花束を一瞥した。
「それでは、バラの前で誓いのキスを」
 そう言って、リザのヴェールを捲りあげる。

バラの言葉は永遠の愛。
或いは、あなたに相応しい。

「まだ本番では――」
 何度か頭の中でシミュレートしているものの、実演となると気恥ずかしい。
「減るものでもないだろう?予行演習だ」
 ロイは、優しく口付ける。
 緩やかな風が入り込み、二人のそれを花束だけが見ていた。
 今の二人に緊張の色は無い。
 見つめ合って、くすりと笑うと遠くから声が聞こえてきたから驚いた。
 どうやら目の前に居る本人は、捜索されているらしい。
「捜されていますよ」
「そうらしいな」
 時計を見れば、そろそろ頃合いの時間だった。
「では、行こうか。マイレディ」
 差し出された手を丁寧に受けて、リザは立ち上がった。

 ふたりのこれからに、幸多からんことを。


END

*POSTSCRIPT*
シャンバラの後のロイアイ妄想。
こうなったに違いない!ということで。
アニメでも原作でも幸せになってくれと思って止みません(笑)
2006.07 / 2010.06