■01.出会い

 今日、東方司令部にひとりの女性将校が来るらしい。
 その地域では、冷静沈着かつ有言実行で有名だそうだ。
 男性陣に言わせれば、そこに美人と言う形容が加わる。
 そのように噂される将校なのだから、当然彼は興味を示すものだと思っていたのだが。

「ハボック少尉、彼女を駅まで迎えに行ってやれ」
 ロイが書類を片手にそう言いつけてくるものだから、びっくりした。
「彼女って、今日来る女性将校のことッスか?」
 てっきり上官自ら迎えに行くものだと思っていたのだ。
 どうやらそう思っていたのはハボックだけでは無いらしい。リザも意外そうな顔をしていた。
「他に誰がいるんだ?」
「そうッスね。…じゃ、行ってきますんで」
 ハボックはコートを引っかけると、早々と執務室を出て行った。列車の到着予定時刻を考えると、少し急いだ方が良いからだ。
 足音が遠ざかり、聞こえなくなったところで、リザは口を開いた。
「大佐がお迎えに行くのかと思っていました」
 他の面子は席を外しているが、居たら誰もが同意しただろう。
「それは女性だからか?」
 とりわけ美人ともっぱらの噂、と言うのは互いに知っている事実だ。
「勿論それもありますが、将軍の孫娘であると伺いましたので」
 親しくしておいて損は無い。
 彼女の推測はそういったところだろう。
 確かにそのような考え方もあるが、とロイは認めながら、書類に署名をする。
「あいにく、私は他の女性に興味は無い。副官が美人なんだ。騒ぐほどでもないだろう?」
 それは裏を返せば、周囲は美人女性に飢えているから騒いでいると言うことだ。
 上官の言葉の分析は出来ても、自分のことは無頓着らしい。
 その形容は過分だと即答して、リザは次の書類を渡す。
 ロイは彼女の言葉に苦笑しながら、手元の書類と交換した。
「出会ったころと変わらないな、君は」
 昔から、その美貌を気に掛けない。自覚していない。
「そうですか?」
 不思議そうにリザは言うが、ロイはその理由を言ってはやらない。
 そういうところが、また好きだったりするのだ。
「ところで」
「うん?」
 訊ね返せば、現実に戻った答えが返ってきた。
「その書類は至急とのことですので。早急にサインを」
 ロイは再びペンを握る。今日は暫く、仕事はさぼれそうになかった。



Date:2005.10.07 / 2010.05.28修正
お題に沿ってるか微妙…?と言うことはこの際置いておいて(お前)
中尉は自分の容姿等に無自覚と思うんです。
将校って少尉以上なんですが、上っぽく聞こえるのは私だけでしょうか