■11.それ以上、それ未満

「大将!マスタング大将!」
 このところ忙しい日々が続いていたので目を瞑っておいたと言うか、別室なので知らぬふりをしていたのだが、悠長なことも言って居られなくなった。
「あ、あぁ…どうした?」
 椅子で眠っていた上官は、まだ夢うつつのような体で、リザを見る。
 ロイとは長い付き合いだが、それと同じくらい彼を起こしている。
「どうした?ではありません。そろそろお時間です」
「時間?」
 リザは溜息を吐く。予定管理はリザに任せっきりで、寝起きともなると重要案件もすっかり忘れているらしい。
「1500頃に来客とお伝えした筈ですが…お忘れですか?」
「そう、だったな…」
 予想外の鈍い反応に、リザは首を傾げる。今日来る客は、僅かに残るやりにくい将官ではなく、イシュヴァール政策の関係者だ。寝て忘れるような案件ではないのだが。
「―――どうかされました?」
 頭を掻くロイに訊ねると、思いもよらない返答だった。
「君と私の関係はどう言い表すのが適当かと思ってな」
「――――は?」
 突拍子のないそれにリザは窘めることすら忘れてしまう。
「君はどう思う?」
「どう、と言われましても…」
 私は貴方の副官です、とリザは言った。
「だがそれだけではあるまい」
「………それは、時と場合に依るのでは」
 たっぷり数泊空いたのは、司令部でおいそれと答えて良いものではないからだ。
 軍上層部の非人道実験を阻止した功績者であったとしても、良く思わない人もいる。
 リザは、窓の外を一瞥した。
 来る予定の客は、まだ到着していないらしい。
 と言うことは、暫く執務室には誰も来ないだろうと判断した。
「例えば、マダム・クリスマスでしたら私の父のことを知っているでしょう」
「正論だな」
「何かご不満でも」
 彼の問いに極力答えたつもりだが、当の本人は納得いかない様子だ。
 するとロイは、リザを見つめて
「君を待たせていると言われた」
 言い返せなかったよ、と苦笑いされても、それが誰から指摘されたものなのか、理解できない。
 話に流されてすっかり失念していたが、そもそもの始まりから唐突だったのだ。
 君と私の関係はどのように言い表すのが適当か、なんて。
「申し訳ありません、話が全く見えないのですが」
「…ヒューズにそう言われた」
 生前から、本気冗談折半で早く嫁を貰えと言っていた彼だ。
 もし彼が生きていたら、ロイに煩く言っても不思議ではない。
 彼が、ロイの夢に出てきた―――と言うところだろう。
「待っているかも知れませんね」
 驚いた、と言うか好からぬ予感が当たったような顔をするロイに、リザは微笑む。
「期待していますよ。大将の未来の実現」
 あなたに付いて行く、と口に出すのは無粋だ。
 それは、お互いに分かっている暗黙の了解。
「お客様がいらっしゃったようです。お迎えしてきます」
 そう言い残してリザは部屋を出る。
 たとえ、自分に説明するとしても一言では表せないのだと、恐らく互いに気付いている。



Date:2011.01.14
最終回後のロイアイは、少し意識してくれると嬉しいなぁ。
他人の人生を勝手に終わらせた自分たちにそんな資格は無いとか思ってそうですが;
そして結論出ずですか…と言うオチ。でも、それでいい気もしています(笑)