■14.願い事

 自分でも矛盾していると分かっている。
 あいつと語った「美しい未来」には、君も含まれている筈だった。
 この国の人たちが、笑って暮らせる世界。それを君にも享受して欲しかったと言うのは、ただの自己満足に過ぎなかった、と思う。
 軍(ここ)は君の来るべきところではない――その身勝手な思考は、無意識に君を括りから外していた。
 士官学校へ進むと言う選択肢を。


 だが、今、君が傍に居ることを好ましく思っていることもまた事実。


「サボってないで仕事してください、大佐」
「そのような発言は控えたほうがよろしいかと」

 的確な忠告や提案。時には護衛。
 たとえそれが私に向けられた小言であったとしても、安堵してしまう。
 君は確かにそこに居るのだと、安心する。

「……口元、緩んでますよ」

 よそ事を考えているとこれだ。
 最も、君のこと以外で綻びることはないが。

 いつからだろう、君に惹かれたのは。
 下心で君を副官にした訳ではないと言うのに。

「大佐」
「うん?」
「そのままでは残業確定ですよ」

 自分の仕事をこなしながら、君は付け加える。
 君の横顔は、本当ならもっと別のところにある筈だった。

「…分かってるよ」
「そのようには見えませんが」

 ばっさりと言われ、仕方なく書類に目を通す。
 今でさえ、感じる君の視線が心地いいと思ってしまう。

「中尉」
「何でしょう?」
「…いや、何でもない」

 君は首を僅かに傾げて仕事に戻る。

 矛盾していると言われようと、願うことはひとつ。


 君に笑っていられる未来を。



Date:2011.03.25
こういう葛藤もあるんじゃないかなぁ、と。
大佐にしろ中尉にしろ、再会するかもしれないとは思っていたけど、
内戦の地と言うのは想定外だったのでは、と言う気がします。