リザはティーカップに紅茶を注ぎ、傍にミルクと砂糖を添える。複数用意されたそれは、隣のリビングへと運ばれる。――その先には、ロイがソファーに腰を下していた。 仕事中と同様、白いワイシャツを着ていることに変わりはないが、それはスタンドカラーで、上から緩くネクタイを締めていた。加えてダークグレーのスラックスと来れば、今どきの紳士の服装である。 彼らは昼食を外で済まし、街をゆっくりと散歩しながら、彼の家に来たと言うわけなのだ。 「お待たせしました」 リザは両ひざをついて、彼の前にカップを置いた。向かい側に自分の分も並べ、トレイはソファーの足に立てかけておいた。 そして視線を彼の隣に置かれたブーケに向けて、尋ねた。 「ブーケ、花瓶に入れましょうか」 「いや…君の部屋に飾るといい」 ロイは色鮮やかなブーケを手に取ると、リザに手渡した。でも…と言いかける彼女に、微笑してこう言った。 「ブーケ・トスというのは、女性のためのものだろう?」 ――ブーケ・トス。そう、これは街の教会で行われていた結婚式で投げられたものなのだ。 ほんの偶然、通りかかっただけだった。歩いていたら声を掛けられ、半ば理由も分らないまま、見知らぬ女性に手を引かれてそこへ行った。どうやら彼は分かっていたようで、行っておいでと言って手を振った。 あとから聞けば、本来、式に参加した未婚の女性に投げられるものなのだが、新郎新婦の意向で急きょ声が掛けられたらしい。訳が分からずその場に行ったリザだが、偶然にもそのブーケを受取って…現在に至る。 「それに君が貰ったものだ。…それを受取った女性は、次に結婚できると言われている」 その言葉にリザは少しどきりとした。ロイは微笑すると、彼女の手を引いて、自身の膝の上に座らせた。 「ちょっ…大佐!」 「少しくらいいいだろう?…それに今日は休日だ」 最後の言葉は彼女が階級で呼んだことに対して言っているらしい。本人も指摘されて初めて気づいたらしく、少し口籠ってしまった。 「幸せそうだったな」 下ろされたブロンドの髪を手で梳きながら、ロイは言った。リザもはい、と小さく頷いた。 「…あの場所に立ってみたいと思ったかい?」 「……何を今さら」 それ以外、彼女は何も言わなかった。彼は彼女の頬に口づけてこう。 「かならず、叶えるから」 END *POSTSCRIPT* SS並の短さ(苦笑) 結婚願望は、大佐>中尉な気がします。何となく。 原作ではそんなこと言ってる場合じゃないけど。 2007.06 / 2010.06 |