※Dance Party/02の続きです。 時計を見たら、午前11時だった。 昨夜は確かに遅くなったが、それにしても遅い朝である。 扉を開ければ、キッチンにリザが立っていた。 「おはよう」 まだ正常に働かない頭を掻きながら、リザに声を掛ける。頭が少々重い。昨晩、少し飲みすぎたか。 「おはようございます。…台所、お借りしました」 ロイがそれを気にしていると思ったのか、リザは挨拶早々に申し出た。 「ああ、それはいいんだ」 掻いていた手をひらりと揺らす。頭が冴えてくる気配が一向にない。宿酔のようだ。 リザもロイの様子に、何となく気がついたらしい。水かそれとも薬の方が良いかと訊ねてきた。 水と答えれば、グラスに注いで渡してくれた。 ロイはダイニングテーブルの椅子に座って、喉を潤した。 「大丈夫ですか?」 「――――私はそんなに飲んでいたか」 記憶を辿れば、然程喉を通した覚えは無い。社交辞令と情報収集のために、グラスは常に持っていなければならなかったが、酒に弱い訳ではないし、一体どういうことか。 リザに訊ねれば、鍋の面倒を見ながら答えてくれた。 「ワインはアルコール度数が高いですから」 麦酒なんかは上流階級の嗜むものでは無いから、昨日はワインやウイスキーなどが多かった。そう考えれば、強ち記憶も曖昧な訳ではないようだ。 「薬、持って来ましょうか?」 心配して覗き込むリザに、ロイは首を振った。 「そんなに酷くは無い」 ただ、少々辛いのは確かだ。 「そうですか」 リザは鍋の前に戻った。 「中尉」 「何ですか?」 今度は首だけで振り返ってくる。もしかすると、手が離せないのかもしれない。 この有り様だから訊ねるが、と言って水を飲み干す。訊いておいた方がいい。 「―――昨晩、私は君に何かしたか」 それがリザにとって予想外の質問だった、と言うのがロイにも分かった。 「どうでしょう?」 鍋の方を見つめて、ひとこと。怒っているようでは無さそうだが、目を見て言ってくれなかっただけに、自信が無い。 「―――――」 「冗談ですよ」 黙っていると、リザからそんな言葉が続いてきた。 ほっと胸を撫で下ろす気分なのは何故だろう。己の記憶に疑わしい部分でもあるのか。 「覚えでもあるのですか?」 彼女は微苦笑していた。 今度は、怒っていないと確信できる。 「―――ない」 「では、どうして?」 随分と遅い朝で、水を飲んだ次にそんな質問だ。 リザのそれは最もだと思って、ロイは正直に話した。 「ヒューズの夢を見た」 「昨晩、話題になってもいましたからね」 リザは驚いていないようだった。 ヒューズ准将殺害事件は記憶に新しく、中央に来て間もないロイには割とその話が持ちかけられた。 そのようなときに異動など大変だと言われたのは、皮肉か厭味か定かではないが、ロイは相手から口火を切られたのを良いことに、情報収集していたのも確かだ。 彼がどのような夢を見たのかは知らない。二人が出会った士官学校時代を知る訳ではないから、彼らが何を語り合っていたのかは知らない。それでも、大よその推測はついていた。 同じイシュヴァールを経験しているから。 「焦ったのですか?」 「そうかもしれないと思ってな」 リザは、グラスに水を注ぎ直して、微笑した。 「自分の貞操を守るくらいの心は持ち合わせていますよ」 意外、と言わんばかりの顔をしたのが分かる。 「まだお酒が残っていらっしゃるようですね。食事はどうされますか?」 リザはどうやら、この話を酔っていたからだと思ってくれるらしい。 「少し待ってくれ。顔を洗ってくる」 顔を洗っても宿酔は治らないが、仕切り直しくらいにはなる。 このまま朝食を摂る度胸は持ち合わせていない。 本当に彼女は気の利く女性だな、と思ったのだが、覚えもないのに聞いてしまう自分は彼女の言うとおり相当酔っていると思い、ロイは一人苦笑した。 END *POSTSCRIPT* DP第3弾。続きはありません…多分(苦笑) 大佐の二日酔いが書きたかっただけなんですが(←)、ヒューズ准将の話を絡ませると シリアスになりますね。…当たり前ですが。 2010.07.17 |