髪をまとめた理由は、伸びてきたわねと友人に言われたからではない。 デスクワークは兎も角、それ以外で邪魔になってきたからだ。 ひとつ言えることは、髪を切ると言う選択肢がなかったと言うことだ。理由が単純なほど、その意思も強いのかもしれない。 だが、その理由は人に話すようなものではない。だから、 「髪、束ねたのか」 と意外そうに口にした上官への返答に少しだけ迷った。 「…射撃などで邪魔になりますから」 それは確かに事実なのだが、感じる上官の視線は詰問のようにさえ思う。 つまり、納得していない。 「…何か?」 各部署へ提出する書類を回収しながら訊ねると、いや、と小さく頭を振って彼はこう言った。 「最近、君の長い髪に見慣れていたから」 昔を忘れた訳ではないのだが、と付け加える。 思えば、彼女の影響を受ける前は、髪を伸ばしたことはなかった。 父の元で彼が錬金術を学んでいたときもまた然り。 「―――理由でもあるのか?」 不意を突かれたそれに、手が止まってしまった。 話の流れからすると、主語は恐らく…。 「大佐、手 止まってますよ」 自分のことを棚に上げているのは承知だが、大した理由ではない。 繰り返しになるが、人に話すほどのものではない。 「君も一瞬止まっただろう」 それに私は君に質問しているんだ、と言い張る。 拘るような理由ではないと言うのに。 どう答えるべきか、迷う。 「…特に深い意味はありません」 「浅い意味はあるのか」 ああ言えばこういう。 確かに、正しい表現かもしれない。 「そうかもしれませんね」 頷いて、扉へと向かう。失礼します、と出入口で一礼しようと振り向くと、 「教えてはくれないんだな」 「大佐にお時間を取らせるような理由ではありません」 至って理由はシンプル。 単純すぎるそれを話して何になるというのだろう。 「それは私が判断することだ」 「少なくとも私の判断では、と解してはいただけませんか」 疾しい訳ではないが、面と向かって言うのも恥ずかしいくらいのそれ。 それくらい、分かって欲しい。 退室の言葉を告げて、リザは執務室を出た。 END *POSTSCRIPT* 最終回後の妄想をしてて、でも中尉って理由をあまり言いそうにないなぁ。 と思ったのがはじまり。大佐は気づきそうだけど。 2011.08.15 |