FULLMETAL ALCHEMIST Roy x Riza Novels-35.



 髪をまとめた理由は、伸びてきたわねと友人に言われたからではない。
 デスクワークは兎も角、それ以外で邪魔になってきたからだ。
 ひとつ言えることは、髪を切ると言う選択肢がなかったと言うことだ。理由が単純なほど、その意思も強いのかもしれない。
 だが、その理由は人に話すようなものではない。だから、
「髪、束ねたのか」
と意外そうに口にした上官への返答に少しだけ迷った。
「…射撃などで邪魔になりますから」
 それは確かに事実なのだが、感じる上官の視線は詰問のようにさえ思う。
 つまり、納得していない。
「…何か?」
 各部署へ提出する書類を回収しながら訊ねると、いや、と小さく頭を振って彼はこう言った。
「最近、君の長い髪に見慣れていたから」
 昔を忘れた訳ではないのだが、と付け加える。
 思えば、彼女の影響を受ける前は、髪を伸ばしたことはなかった。
 父の元で彼が錬金術を学んでいたときもまた然り。
「―――理由でもあるのか?」
 不意を突かれたそれに、手が止まってしまった。
 話の流れからすると、主語は恐らく…。
「大佐、手 止まってますよ」
 自分のことを棚に上げているのは承知だが、大した理由ではない。
 繰り返しになるが、人に話すほどのものではない。
「君も一瞬止まっただろう」
 それに私は君に質問しているんだ、と言い張る。
 拘るような理由ではないと言うのに。
 どう答えるべきか、迷う。
「…特に深い意味はありません」
「浅い意味はあるのか」
 ああ言えばこういう。
 確かに、正しい表現かもしれない。
「そうかもしれませんね」
 頷いて、扉へと向かう。失礼します、と出入口で一礼しようと振り向くと、
「教えてはくれないんだな」
「大佐にお時間を取らせるような理由ではありません」
 至って理由はシンプル。
 単純すぎるそれを話して何になるというのだろう。
「それは私が判断することだ」
「少なくとも私の判断では、と解してはいただけませんか」
 疾しい訳ではないが、面と向かって言うのも恥ずかしいくらいのそれ。
 それくらい、分かって欲しい。

 退室の言葉を告げて、リザは執務室を出た。



END

*POSTSCRIPT*
最終回後の妄想をしてて、でも中尉って理由をあまり言いそうにないなぁ。
と思ったのがはじまり。大佐は気づきそうだけど。

2011.08.15