FULLMETAL ALCHEMIST Roy x Riza Novels-37.
「大佐、会議のお時間です」
向かう気配がないから言うと、あからさまに嫌な顔をした。
「…君が代わりに行きたまえ」
「冗談言う時間はありませんよ」
資料を押し付けて執務室を追い出した。
「もうこんな時間か」
時計を見て立ち上がる彼に、数年前を思い出した。
「変わりましたね」
「うん?」
資料を纏める上官に言えば、至極真面目に言われた。
「それは君が傍にいるからだろう?」
*Postscript*
611 Museum of Anniversaryへの献上作品。
時間は1345、会議15分前のイメージ。
前章みたいなものがあったりなかったり
2012.08.05
会議の資料集めを手伝って、リザが纏めたものを手渡すと、彼はとあることを口にした。
「―――はい?」
冗談にしては真面目な声音で、リザは首を傾げる。
確かに、資料集めは手伝っているが、会議を主催するのは上官のはず。
暫しの沈黙からそれが真剣なそれだと悟り、
「どういう意味ですか?」
と訊ねた。
「どういうも何も…君にも話し合いに入って貰うと言っている」
「ですから、どうしてそういう話になりますか」
話し合いの内容は分かっている――が、問題はそこではない。
前政権の頃はしばしば冗談で(本人は本気だったらしいが)よく似たことを言っていた。
最近はそんなことなどなかったと言うのに。
「君も佐官だ。不思議な話ではないだろう?」
彼が自分と同じ階級の時の話を持ち出されると、返す言葉がない。
佐官以上の会議だと言われたこともあったと昔の話を出されて、言葉に詰まる。
「―――なんてな。君が昔の私のように嫌がるとは思わないが」
そう言ってロイは、机の隅に置いてあった会議案内をリザに手渡した。
「内容は知っていると思うが…女性の視点が欲しい」
案内状には、教育・雇用についてと書かれていた。
「大体、イシュヴァールを抜きにしてもおかしいと思わないか。働く女性が少なすぎる」
確かに、氷の女王と呼ばれる彼女(ひと)もいるが――軍籍の女性は少ない。
居ても事務職が大半を占める。リザやレベッカ、ましてやオリヴィエのような人はごく稀だ。反面、家業に従事する女性は多いが。
「…それは、確かに」
だが、とリザは己に問いかける。女性であるのは確かだが、一般女性のそれとかけ離れている自覚はある。
「うん?」
言葉の続きがあると気付いた彼は、リザに続きを促す。
「あなたが期待するような視点で話すことは――」
口籠っているのは、後ろめたいからだ。
「私が期待しているのは、君の視点だが?」
ロイは笑う。
「何も君に世論を代弁しろと言っている訳ではない」
彼は思うのだ。
意見の評価はどうであれ、彼女が女性として参加することに意味があると。
それをきっかけに、世論が女性の意見に耳を傾けるようになれば良いと。
そんなことを考えながらそれでも無理かと問うと、リザは頭を振り――分かりましたと頷いた。
END