I Remember You 10.



「ニューオープティンの将軍が、マスタング大佐に直接お話ししたいことがあるとのご連絡が。将軍の中央駅到着予定時刻は1100。なお、1300から軍議がありますので、それまでにお済ませになりますよう」
 事務連絡に、ロイは顔をしかめた。スケジュール管理は副官のリザに任せてあるが、それに対する不満ではなく、突如入ったそれにうんざりしているのだ。
「15分で終わらせる。どうせ文句を言いたいだけだろう」
「…そんなところでしょうね」
 若くして大佐の地位に就いたロイの敵は多い。
 最も、相手が勝手にライバル視、或いは敵視しているだけなのだが。
 ロイに同意したのはいいが、それはいつの記憶だったかと考える。
「――――どうした?」
 引き出しから万年筆を取り出して、リザの顔を伺う。
「…いえ、何も。」
 では、その予定通りにお願いします、とリザは付け加えて執務室を出る。扉を開けたところで、
「―――少尉?」
 ハボックが出勤してきたところだった。

「ごめんなさい、少尉」
 昼食のためにハボックと一緒に外に出たリザは、席についたところでそう切り出した。
「まだ思い出すことは出来ていないけれど、忘れることは出来ない」
 リザが誰のことを言っているか分からないほどハボックも馬鹿ではない。
 卑怯な手を使ったと言う罪悪感がない訳ではなかった。だが、取り乱す彼女を見たら居ても立ってもいられなくなった。あんな彼女の姿を初めて見た。
 だが、今の彼女は違う。何を、と正確に言うことは出来ないがどこか違う。何かを吹っ切ったような。
 今、辛い顔をさせているのはハボックの所為だ。
 顔を上げてください、と後ろめたく俯くリザに言った。
「そんな顔せんでください。俺はそんな中尉の顔が見たくて言ったんじゃない」
 はじめから、分かっていた筈だ、とハボックは思う。
「記憶喪失になったくらいで大佐のことを忘れられない関係だってことは、分かってました。謝るのは俺の方です」
「少尉…私はそんな――」
 記憶を失う以前の彼女の顔――それを自分は引き出せないと自覚する。
「あの時も言いましたが、俺は中尉の笑った顔が好きなんです」
 だから、彼女が幸せならそれで。


To be Continued...



2005.01 / 2010.09