I Remember You 11.



「…大佐」
 廊下でばったりと会ったハボックは、半ば無意識に階級を口にした。
 出来れば今はあまり会いたくないと言うのが本音だったが、会ってしまったからには仕方がない。
「軍議、終わったんスか?」
「あぁ。…お前は、視察の帰りか」
 執務室に足を進めて、ロイは訊ねた。
 昼で外に出て帰ってきたには少し遅い。となると、視察で回り道をしてきたと考えるのが妥当だ。
「飯食いに外に出たのでそのまま。中尉も一緒でした」
 ハボックはちらりと背後を見た。リザは階下の部署に用があるらしく、途中で別れた。
「大佐」
「なんだ」
 中尉と一緒だったと言ったときの上官の表情をハボックは見なかったが、これを聞けば不機嫌だと分かる。
 彼女の前では何も変わったそれを見せないのは、気遣いだろう。
 ハボックは、息を吐き出す。
「中尉を泣かさないと約束できますか。辛い思いをさせないと誓えますか」
 それが、いつもの軽々しいものではないことは一目瞭然。
 目と声がそれを訴えている。
 最も、リザのことを言われて真面に受けない筈はないが。
「―――誓える」
 その言葉に、ハボックは挑発的に笑って見せた。
「確かに聞きましたよ、その言葉。万一、中尉を泣かせるようなことがあれば」
 上官に手を上げる―――そう言われても仕方のないそれ。
 それくらい、ハボックは本気だった。
「大佐でも容赦しないんで。覚悟しておいてください」
 眉に迫って睨みつけると、ぱっと腕を離し、執務室に戻る。
 剣呑な雰囲気になるのなら、さっきの言葉は嘘だと言うことだろう。
 そう思ってハボックは、自分の閉めた扉を見る。
 リザがそれを聞いていたと言う懸念は微塵もなかったのだった。
「中、尉」
 驚かざるを得なかったのはロイだ。
 リザには、記憶を失う前の関係を話していないからだ。
「今の話を―――」
 助詞が少し妙なことに気が付く。
 そうして、今にも泣きそうな彼女の顔。
「私は信じても良いのですか――?」


To be Continued...



2005.01 / 2010.09