「―――君の家に行っても良いか」 話を切り出したのはロイだった。目当ての品を買って、リザを家に送る途中。 不審者の目撃情報も大分減ったし、心配には及ばないと言ったのだが、ゼロでは無いと押し切られた。これで雨なら雨の日は以下略と反論するが、今日は、彼の好意に甘えることにした。 (…今回のことで大佐に迷惑かけたのに、軽率だったわね) とリザが思った矢先だった。 そんな言葉が飛んでくるとは思わず、リザはきょとんとする。 「今日、ですか」 訊ねると短い肯定の返事が返ってくる。リザは記憶を辿り、考える。 「無理は言わない。また日を改める」 強いたりはしないよ、とロイは軽い声音で言った。 「無理強いなんて――」 リザは目線を逸らす。 彼女の家に行けないことは残念だが、記憶が戻って良かったとロイは思うことにした。 だから、 「―――じゃないですか」 と前半の大事な部分を聞き逃してしまった。 否、聞いてはいたが、予想外のそれだったから、聞き紛いだと思った。 「君は今、何と?」 「だから、食事を作って差し上げられない、と言ったのです」 ロイは押し黙った。まさか、そんな理由で戸惑っていたとは考えもしなかったからだ。 「大佐?」 「…君はそんなことを気にしていたのか」 仰々しく溜息を吐く。 君の料理は期待している。だがそれは、飽くまでひとつの理由であって、最大理由では無い。 「私にとってはそんなことではありません」 もう市場も閉まってしまいました、と付け加えるリザの声は落胆のそれ。 「では聞くが、何も無い、と言う訳ではないのだろう?」 「…それは、そうですが」 いつにも増して、大したものなど作れませんよ?と言うリザに、ロイは口元が綻んでしまう。 期待はしているが、作る品々を当てにしている訳ではない。 「君の手料理――それだけでいい」 それに、とロイが付け加えると、リザは不思議な顔をした。 「君と過ごせれば、私は何も要らないが?」 瞬間、リザは顔を真っ赤にして、明後日の方を向く。 「恥ずかしいことを真顔で言わないで下さい!」 暫くリザは隣を歩いてくれなかったが、斜め後ろから彼女を見るのも、悪くはないとロイは思った。 Fin. *POSTSCRIPT* おまけも改変してみました。 何でだろう…大佐は一歩間違えればただの変態でしかない と言うのが否めない(苦笑) 2005.01 / 2010.10 |