■FULLMETAL ALCHEMIST - Conquorer of Shamballa - Heiderich x Edward
「はい、エドワードさんの分。熱いから気をつけてね」

珈琲を手渡して、ハイデリヒはエドワードの向かい側に座った。ハイデリヒが窓際で、エドワードが斜めの扉側――これが、いつもの定位置だ。
「あつッ・・・」
言っている先からこの有様だ。まったくもう、エドワードさんは。そんな表情でハイデリヒはハンカチを渡して、零れた珈琲を丁寧に布巾で拭いた。
「シャワー、浴びてきたら?服、汚れっちゃったし」
「――悪ぃ、そうする」
エドワードは立ち上がって、浴室へと消える。
それをどこか寂しい顔でハイデリヒが見送ったことを、彼は知らない・・・。

また、だ。
性格はしっかりしているのに、しょっちゅう珈琲を零したりする。深夜に部屋を覗くと、お腹を出して寝ていたりする。毛布を直してあげると、ある、と寝言で言う。きっとそれは僕じゃない、そんな気がする。いつも世話を焼くたびに、かなしい顔をして僕を見る。

きっと、弟さんを僕に重ねているのだと思う。

初めて出会ったときの、あの表情。呼んだ名前。
エドワードさんの弟は僕そっくりだから、エドワードさんは僕の向こうに、弟さんを見てる
――そう、さっきのように。

ハイデリヒは棚から一冊本を取り出した。ぱらり、と捲って――微笑。
「ロケットを研究しているのも、弟さんの為なんだね・・・」

*

「……随分、遅かったね。エドワードさん、いつも早いのに」
ハイデリヒは開いていた本を閉じた。エドワードが飲み注した珈琲は綺麗に片づけられたいた。
彼の言葉が、一瞬弟に重なった。にいさん――とエドワードには、聞こえた。
「……アル……」
小言で呟く。まだ、彼が弟に重なっている。
「エドワードさん?」
ハイデリヒにそう呼ばれて、エドワードははっと我に返った。弟の姿はもうなくて、目の前にいるのは――アルフォンス・ハイデリヒ。
「フ、フロ空いたから!湯貼っておいたから冷めないうちに入れよ」
エドワードは誤魔化そうとした。けれど、彼はわかっているように、見えた。
「――うん」
ややあって、彼は返事を返す。浮かない顔をしていた彼にエドワードは少し動揺した。
「…アルフォンス?」
「ほら、髪はきちんと拭かないと湯冷めしてしまいますよ」
こころを隠すように、ハイデリヒはエドワードの肩に掛かっていたタオルを取った。それを頭に被せて、がしがしとエドワードの髪を拭いた。
「エドワードさん・・・」
「うん?」
顔が見えない。彼は、一体何を思っているのだろうか・・・?


「―――僕でも代わりになれますか?」


それはほんとうに小さな声だった。タオルと髪の擦れる音にさえ、掻き消されそうなほどに。
けれど、聞こえた。でも、それは――
「え……ア、アルフォンス?」

ボクデモカワリニナレマスカ

確かに、そう聞こえた。これは、何かの間違いだろうか。
動揺してしまう。彼に、そんなこと言われたら
「湯貼ってくれたんでしたね。入ってきます」
去るハイデリヒをエドワードは茫然と見送った・・・。


Date:2007.04.20
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