東方の冬は寒いというのに、今日はさらに雪が降っている。
しかし、どうやら降り始めたのは早朝かららしくまだ大して積もっていない。が、外の気温はかなり下がっているようで執務室にある窓はうっすらと曇り始めていた。

「そういえば、今日クリスマス・イヴっすね」

煙草を燻らせ、ハボックが呟く。そして彼と同じロイの部下もまた"イヴ"という言葉を口にする。
だが何時にも珍しく、一番サボるであろう司令官は時折面倒臭そうな表情を浮かべつつも、机に向かっていた。彼を注意する副官は不在だというのに。
彼女が今日不在なのには理由がある。実は先日整理した書類で、年内に使い切らねばならない有給休暇をホークアイが使っていないことが発覚した。だからといってこの忙しい年末に今更休暇をとるつもりはないホークアイはそれをロイに報告せずに放っておいていた。だが、その書類によってそのことがロイの耳に入り…現在に至る。
因みに言うと、「いつでもいいから年内に休暇をとれ」と言われとっさに答えたのが今日だったらしい。

「大佐ぁー今日はこの際、パァーとやりません?」

どうやら、さっきのハボックの一言からそういうことに発展したらしい。が、その提案にロイは取り合う様子は無い。逆に年内に終わらないと困るからさっさと仕事をしろ、と釘をさされた。
普段なら必ず乗るであろう内容に全く乗らない。この背景にはホークアイが関わっているのは言うまでも無い。

昨日、勤務時間が終わり誰もが帰宅し始めるそんなとき。
「私が居ないからと言ってくれぐれも仕事をサボらないでくださいね」とホークアイはロイに一言したという。これだけなら、彼女が休暇をとるときに見られない光景ではないのだが、今回は年末ということもあるのか、もう一言付け加えられた。
「仕事が片付かないと、年始一緒に過ごせませんよ?」
と。
――こうとなれば話は別だ。彼に言わせれば今日も食事にでも誘おうかと思っていたのだが今日は休暇をとっているのでそれを断念したのだとか。ならばせめて年始だけでもという考えなのだ。

そういうわけで彼は仕事をしているのだが、事情を知らない彼らはさぞかし疑問の意を抱いていることだろう。


午前中が終わると、外は雪景色だった。出勤時に積もっていなかったのはまるで嘘のようだ。
司令部入り口に立っている憲兵は周辺の雪かきを始めていた。
「うへぇー大分積もったな…」
「いつまで降り続くのでしょうか」
などと彼らは話している。
これ程降ったら、街には人影も無いだろうと目をやると、雪の中歩いている女性が見えた。
ブロンドの長い髪・・・
彼らは気付いていないようだがあれは確かに彼女だ。

昼食の時間だと適当に理由をつけてロイは司令部を出た。


「中尉」
「大佐!!今から昼食ですか?」
「君の姿が見えたから少し出てきた。どこか行っていたのか?」
雪の日に出かける理由など余り無いと思うが…言いたくないなら言わなくていいぞ。と付け加える。
「えぇ…これを大佐にと思いまして」
と手持ちの紙袋から灰色のマフラーを取り出す。
「?私にか?」
「友人に教わって作ったんです…でも今年初めてで…上手く出来ていないですが…」
少々恥ずかしそうにそれを渡す。
「ほぅ…君が編んだのか。」
長さは自分の身長と変わらない。相当の時間を費やしたのが分かる。
「お恥ずかしながら…///」
「これはいいな。早速明日から使うことにしよう。」
「そう言って頂けると嬉しいです」
「大変だっただろう?」
「い、いえ…私が不器用なだけですから」
そうしてまた顔を下げる。
そんなホークアイにロイは訊ねる。何か欲しいものはあるか、と。


「…では一つだけ。」





――貴方と共に年越しを。





「そんなことでいいのか?」
(モノのつもりで言ったのだが…)
「だから仕事、してくださいね?」
(結局そういうことなのか?)
「――中尉、それはないだろう?」
「忘れておられるのかと思いまして」
とくすっと笑う。
「忘れるわけないだろう?楽しみにしていたまえ」
「期待しないで待ってますよ」



愛のお題「贈り物」
大佐の視力が良過ぎるような気がするのは気のせい…(笑

〜2006.02.06


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