帰宅すると電話が鳴った。

自宅に掛かってくる電話といえば、司令部からの用事か、親友からの電話くらいだった。
しかし、その親友ももう居ない・・・。
だとすれば、司令部からだろうが、ここ何日か事件もなければ暴動などの報告も受けていない。
いつ戦争が起こっても不思議ではない…そんな国の軍部に勤めている訳だが、多少の息抜きは出来るのでは無いかと思っていた。

相手が誰だろうか、と思考を巡らしながら電話を取った。

すると向こうからは女性の声。

しかも誰よりも大切に思うひと。


「あ、あの・・・マスタング大佐でしょうか。」

妙に落ち付かない様子の彼女の声。

「少し慌てているぞ?何かあったか?」

と聞いてみたが返事は無い。すると一つのことが頭に浮かんだ。


――今日の仕事のことか?


彼女は今日、非番だった。


「司令部のことなら今日は何もなかったぞ?」

きっとこのことで電話をしてきたのだろうと思うことを話してみたが「…そうですか」と話題を合わせる様。決して彼女がそういうつもりで言っているのではないとは分かっているが。

「君が電話してくるとは珍しいな。」

と試しに言ってみる。彼女は何か話してくれるだろうか。

「す、すいません。特に用事は無かったのですが・・・・」





――大佐の声が聞きたくなって。







と受話器の向こうで恥ずかしそうに。

あぁ、そうだったのか。

自分でも思った。彼女が居なかったからだと。
今日、執務室で何か抜けてしまったような感覚はこれだったのか。
君の声だったのか。


「私も君の声が聞きたかったよ・・・。今日は一度も聞いていなかったからね。」

そう言った。すると君は

「少し、嬉しいです。貴方がそう思っていてくれて」

と。"少し"という言葉が気になって

「少し?」

繰り返してみる。

「・・・いえ、凄く・・・」



素直だな、君は。




「――中尉。」

「?」


「――今から、来るか?」

何処にも行くことは出来ないが。
せめて逢うことだけでも。
互いに思ったときには・・・。




愛のお題「逢いたい」
お互いこういう気持ちであって欲しいと言う管理人の願望(笑


〜2006.03.18

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